「蓄電池の寿命はどれくらいなの…?」
「寿命の長い蓄電池はどれ…?」
蓄電池の寿命はメーカーごとに違いますし、またその使い方によっても左右されます。
そこでこの記事では、家庭用蓄電池の寿命やメーカー保証について解説します。先に結論からお伝えすると、蓄電池の寿命目安は「15〜30年」です。
寿命を延ばすためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 1日1サイクルの利用
- 満充電・過放電を避ける
- 温度変化の大きい場所で利用しない
安くない費用がかかるからこそ、寿命が長くなる蓄電池選びの参考にしてください。
家庭用蓄電池の寿命目安は「15〜30年」
家庭用蓄電池の寿命は15年〜30年と言われています。 しかしこれはあくまで目安。実際の寿命は製品によって大きく異なります。なぜなら、メーカーごとに販売している製品で蓄電池に使われているリチウムイオン電池のサイクル数が異なるためです。 そのほかにも、蓄電池の寿命は以下を確認しておきましょう。
- 蓄電池のサイクル上限回数
- メーカーの保証年数
ここからは、上記のポイントをくわしく解説します。
蓄電池の寿命はサイクル回数によって決まる
蓄電池の寿命はサイクル回数によって決まります。
サイクル回数とは、蓄電池が充電と放電を繰り返す回数のことで、1日に1回充放電すると1サイクルとカウントされます。
蓄電池はサイクル回数が増えるほど劣化していくため、ひんぱんに利用すると寿命が短くなります。これはサイクル劣化と呼ばれており、バッテリーの電圧がわずかに低下することで発生します。
つまり、蓄電池はサイクルを繰り返すことでサイクル劣化を引き起こして徐々に容量が減少し、貯めておける電力量が減ってしまうことで寿命を消費するわけです。
ちなみに、蓄電池のサイクル回数はメーカーが販売する製品によって異なるため、同様に寿命にも違いがあります。
メーカー | 寿命サイクル数 | 寿命年数 |
---|---|---|
ニチコン | 11,000サイクル | 30年 |
オムロン | 11,000サイクル | 30年 |
田淵電機 | 12,000サイクル | 33年 |
長州産業 | 11,000サイクル | 30年 |
長州産業 | 12,000サイクル | 33年 |
伊藤忠 | 6,000サイクル | 16年 |
パナソニック | 10,000サイクル | 27年 |
シャープ | 11,000サイクル | 30年 |
京セラ | 6,000サイクル | 16年 |
こうした違いにも目を向けられると、できるだけ長く利用できる蓄電池を見つけられますよ。
メーカー保証は「10〜15年」が一般的
メーカーの保証期間は、故障や不具合が発生した場合に無償で修理・交換を行ってくれる期間のことで10年〜15年が一般的です。
メーカー | 無償保証 | 有償保証 |
---|---|---|
長州産業 | 15年 | 20年 |
シャープ | 10年 | 15年 |
パナソニック | 10年 | 15年 |
京セラ | 15年 | – |
ニチコン | 10〜15年 | – |
伊藤忠商事 | 10年 | – |
オムロン | 15年 | – |
ネクストエナジー | 15年 | – |
ダイヤゼブラ | 15年 | – |
蓄電池の寿命は「10〜30年」ですから、できるだけ長く使いたい方は「15年」を設定しているメーカーを選びましょう。ただ、これはあくまでメーカーの保証であり実際の寿命とは異なります。
保証期間が過ぎても故障しなければ使えますし、満タンの容量から大きく低下していても使える場合があります。
逆に、保証期間内でも使用方法によっては劣化が早まる場合もあるので、寿命を延ばすためにできることは行いましょう。
寿命を迎えた蓄電池はもう使えないのか
寿命を迎えた蓄電池は使うべきではありません。
なぜなら、そのまま使い続けることで「火災」の危険性が高まるためから。ここでいう蓄電池の寿命とは、正常に機能しなくなる状態のことです。
- 充電や放電がうまくできなくなる
- 発熱や異臭が発生する
- 故障する
容量が低下している蓄電池は、過充電(満充電からさらに充電した状態)を引き起こしやすい状態となります。
本来は過充電になる前にシステム管理されていますが、蓄電容量が減っていると通常通りの充電でも過充電を引き起こす可能性が高まります。
その結果、リチウムイオン電池の温度は上昇を続け、最終的に火災に発展することが総務省消防庁の実験でも公開されています。
蓄電池の寿命を延ばす3つの使い方
蓄電池は初期費用が高くかかることから、少しでも長く使いたいと考える人がほとんどのはず。そこでここからは、蓄電池の寿命を延ばす使い方をご紹介します。
使い方1.1日1サイクルの利用
蓄電池の寿命は、充放電を繰り返すことによって徐々に劣化するため、1日1サイクルの利用にとどめておくと2倍に延ばせる可能性が高まるでしょう。
蓄電池の寿命が10,000サイクルと仮定した場合、寿命に大きな差が出ます。
サイクル数 | 寿命 |
---|---|
1日1サイクル | 約27年 |
1日2サイクル | 約13.5年 |
夜間の電気代が安い場合は、夜間に充電して昼間に使えばうまく1サイクルに。逆に、昼間の電気代が安いご家庭は、昼間に充電して夜間に放電するサイクルがよいでしょう。
このように、一定の時間帯で決められた充放電を繰り返して1日1サイクルにするだけでも、寿命を2倍・3倍と延ばせます。
使い方2.満充電・放電を避ける
また、蓄電池の寿命を伸ばそうとサイクルを減らす場合、「満タンまで充電する」・「完全に放電しきった状態にする」ことを避けることも大切です。
メーカーで公開されているサイクル数は、満充電や過放電を避けて正常な状態で使用した場合を想定しており、10,000回であれば約26年ほど利用できます。
しかし、満充電の状態で放置すると内部で化学反応が促進され、熱を持つことで劣化が進みます。また過放電の状態で保管している場合は結晶化が進み、正常な化学反応を引き起こせなくなることで劣化を引き起こすでしょう。
どちらにおいてもバッテリーの性能を劣化させ、サイクル数が減少することから寿命を短くしてしまうので、寿命を延ばしながら安全面を考えて満充電・過放電の状態は避けましょう。
使い方3.温度変化の大きい場所に設置しない
蓄電池は、温度変化の大きい場所に設置しないことも大切です。温度変化に影響を受けることで化学反応を適切に行えなくなり、余計な負担がかかることで劣化を早めてしまうからです。
とくに、温度の高い場所に設置すると内部抵抗が低下して電力効率はよくなるものの、蓄電池そのものからも熱が出てしまいます。そうすると出力は制限されている状態のまま、余分に化学反応が発生して劣化を早めてしまいます。
蓄電池が持つ特性によって劣化が進むため、温度変化の大きい場所には設置せず、屋外・屋内で適切な温度を保てる場所を選ぶことが寿命を延ばすことにつながるでしょう。
寿命・保証期間が長いおすすめ蓄電池3選
最後に寿命・保証期間が長いおすすめの蓄電池をご紹介します。ここで紹介する蓄電池はそれぞれサイクル数が10,000回を超えており、約26年間は使い続けられるでしょう。
また、保証期間も無償で10〜20年(一部有償あり)と長く設定されており、早期に劣化したときや発熱等のトラブルに見舞われても修理の依頼が可能です。
ここからはそれぞれの蓄電池の特徴やメリットを解説するため、ぜひ参考にしてください。
長州産業:「スマートPVマルチ」
長州産業は、低価格かつ長寿命の製品がそろっているメーカーです。保証に関しては業界最長の20年で、顧客サポートにはかなり力を入れていることが分かります。
サポートも丁寧かつ、家庭用蓄電池として安定した品質の製品を比較的安く購入できるところが大きなメリットだといえるでしょう。
メリット
スマートPVマルチのメリットは、高品質な蓄電池であるのに比較的安価で購入できる点です。さらに…
- 3種類の蓄電容量
- 全負荷・特定負荷の選択
- 単機能・ハイブリッドの選択
といった選択が可能なので、ご家庭の目的に合う必要な機能が揃った製品を購入することができるのは、大きなメリットでしょう。
デメリット
長州産業のスマートPVマルチは単純に金額だけを海外メーカーと比較した場合、少しだけ高く感じてしまうでしょう。
しかし業界の中で唯一の国内生産であったり、充実した保証内容を含めると十分に価値の高い製品ですので、気になった方はぜひ見積もりをとってみてください。
メーカー | 長州産業 |
機種名 | スマートPVマルチ |
重量 | 65~150 kg |
蓄電容量 | 6.5/9.8/16.4kWh |
保証 | 15年間:無料 |
設置場所 | 屋外/室内 |
住友電工:「パワーデポH」
住友電工の蓄電池「パワーデポH」は、15年保証が無償で付いてくる大容量のハイブリッド蓄電池です。12.8kWhという容量のため高出力の電気出力に期待できます。
機器はすべて一体型ですので配線も少なく、スッキリさせられるため外観にこだわりたい方にはとくにおすすめの蓄電池です。
メリット
パワーデポHのメリットは、保証・アフターサポートの充実さです。
保証は業界の中でも珍しい「無償15年」。なおかつ機器の保証や見守りサービスなど充実したサポートサービスが無料でついています。
デメリット
パワーデポHのデメリットは容量が大きいため、少し金額が高くなってしまう点と色々な機能を一体化させたことにより、サイズが大きくなっているところはデメリットでしょう。
メーカー | 住友電工 |
機種名 | パワーデポH |
重量 | 230 kg |
蓄電容量 | 12.8kWh |
保証 | 15年間:無料 |
設置場所 | 屋外 |
シャープ:「JH-WB1921」
シャープのJH-WB1921は、長寿命なところと長い保証期間で注目を集めている蓄電池です。初期費用は高いものの、高品質で長期的な運用コストの削減を重視する人に向いています。
メリット
- 消費電力や設置場所を自由に選べる
- 太陽光発電と連携して電気代を削減できる
- AIで電気容量の管理が楽
シャープのJH-WB1921は、エネルギー効率が高い点が大きなメリットと言えます。また、自己放電が少なく充放電時の副反応による消耗が少ないため、長寿命に期待できるでしょう。
さらに、使用する環境や状況、保守条件などの要因によって左右される蓄電池の寿命に対して、AIで適切に管理できることで長く保つことができます。
デメリット
- 高品質のため初期費用が高い
- 設置スペースは自由だがスペースが必要
一方で、シャープのJH-WB1921にはいくつかのデメリットも存在します。その一つが初期投資コストが比較的高い点です。
また他の蓄電池と比較して体積が大きいため、設置スペースに制限がある場合には注意が必要です。
メーカー | シャープ |
機種名 | JH-WB1921 |
重量 | 約74 kg |
蓄電容量 | 6.5kWh(6.3kWh) |
保証 | 10年間:無料15年間:有償 |
設置場所 | 屋外・屋内 |
まとめ:寿命が長持ちする使い方・選び方をチェックしよう
この記事では、家庭用蓄電池の寿命について解説しました。蓄電池の寿命は10〜30年で、長持ちさせるポイントは下記の3つです。
- 1日1サイクルの利用
- 満充電・過放電を避ける
- 温度変化の大きい場所で利用しない
また、蓄電池は温度変化に敏感であり、長寿命を実現するためにも温度変化の激しい場所に設置することは避けるべきです。
そのため、購入前から寿命が長く、保証が充実したメーカーを選ぶと失敗を減らせるでしょう。ぜひ、この記事を参考にして、自分に合った蓄電池を選んでみてください。