V2H(Vehicle to Home)は、EV車から住宅への電気供給を可能にする機器です。
省エネで便利なV2Hですが、高額な費用で設置をためらっている人や、そもそも価格相場を知らないという人も多いでしょう。
そこでこの記事ではV2Hの初期費用と国・地方自治体による補助金制度、またV2Hの選び方とおすすめメーカーについて詳しく解説しています。
V2Hの導入は、補助金の利用や選び方によって費用を大幅に抑えることができます。ぜひ参考にしてください。
V2Hの初期費用
V2Hの設置にかかる初期費用は約70〜200万円と、機種によって大幅に変動します。
「V2Hの初期費用」は、機器代と工事費に分けられます。双方の相場をあらかじめ押さえておきましょう。
それぞれの価格相場について、詳しく解説します。
V2Hの『本体機器』にかかる価格相場
V2Hの本体価格は約50〜180万円程度で、メーカーや型番によってさまざまです。
ここでは、代表メーカーの希望小売価格を紹介します。
ニチコン EVパワーステーション
スタンダード3.7m | 498,000円 |
スタンダード7.5m | 548,000円 |
プレミアム | 898,000円 |
ニチコン トライブリッド
一体型 | 1,300,000円 |
セパレート型 3.5m | 1,500,000円 |
セパレート型 7.5m | 1,600,000円 |
パナソニック eneplat
V2Hスタンド 6kW | 1,760,000円 |
その他メーカー
東光高岳 | 750,000円 |
デンソー | 1,100,000円 |
アイケイエス | 1,900,000〜2,300,000円 |
GSユアサ | 2,500,000円 |
また、上記の価格はあくまでも「定価」である点には注意が必要です。販売店によって割引額は違うので、目安の1つとして捉えましょう。
V2Hの『工事』にかかる費用相場
V2Hの工事価格は、20万円~40万円程度です。
価格は業者の施工体制や設置場所の状況、配線の長さなどによって変わってきます。
工事にも高額の費用がかかりますが、前述したように、国からの補助金では上限15万円の補助を受けることができます。次の章で詳述します。
2024年最新!V2Hの補助金制度
国と自治体は補助金制度を設け、V2Hの導入を促進しています。
国からの補助金では、最大45万円の補助金を受け取ることができます。また、各都道府県、市区町村にも補助金制度が用意されている場合があります。
この2つの補助金は原則併用可能です。
ここから、それぞれの補助金について解説していきます。
2024年版:国からの3つの補助金制度
国が設けている V2Hの補助金制度は、以下の3つです。
- CEV補助金(2024年6月中旬から受付開始)
- DER補助金
補助金額はいずれも同額で、設備費は多くの機器で半額、工事費は全額の補助を受けることができます。
1. CEV補助金(V2H充放電設):2024年6月中旬〜受付
CEV補助金は、災害時の給電設備としてEV車を使うことを促進する補助金制度です。
2024年度の予算案が公表され、6月中旬から受付が開始されています。
昨年度分は、受付からわずか2ヶ月で終了してしまいました。
今年度は募集が2回に分かれており、8月下旬にもチャンスがありますが、申請を検討している方は、早めに申し込みましょう!
補助額(公共施設など) | 機器代:1/2(上限75万円) 工事費:上限95万円 |
補助額(個人) | 機器代:1/3(上限30万円) 工事費:上限15万円 |
交付条件 | V2Hを新品で購入し、設置する者 |
申請期間 |
①受付中〜2024年7月17日 |
2. DER補助金
DER事業では、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた実証実験を行なっています。その実験に参加する代わりに補助金が支給される、という仕組みです。
2024年の詳細はまだ公開されていません。ただし、今年も行われる予定なので、2023年の情報を確認しておきましょう。
補助上限額 |
機器代:50%(上限75万円) |
実験内容 | *HEMSという管理システムを介して、蓄電池の充電・放電が遠隔制御される |
交付条件 |
|
申請期間 | 未定 |
実証期間は3年間ですが、実験に協力するのは1年間に1週間程度です。
遠隔制御中は一定の電気代がかかりますが、短期間で終わるのでそこまで大きい損失にはなりません。
CEV補助金がおすすめ
DER補助金では、別途機器の設置や電力会社の変更など、少々手間がかかる点がデメリットです。
CEVは6月中旬から受付が始まっており、8月にも2度目の募集が予定されているので、今年V2Hの導入を検討している方は、CEV補助金を申請することをおすすめします。
機種ごとの補助額
前述しているように、本体価格の補助額は、機器代の1/3、上限は30万円です。
次の表で、代表的なメーカーの機種別に、補助額を示しています。ぜひ参考にしてください。
ニチコン EVパワーステーション
補助金額 | |
スタンダード3.7m | 166,000円 |
スタンダード7.5m | 182,600円 |
プレミアム | 299,300円 |
ニチコン トライブリッド V2Hスタンド
補助金額 | |
一体型 | 300,000円 |
セパレート型 3.5m | 300,000円 |
セパレート型 7.5m | 300,000円 |
パナソニック eneplat
補助金額 | |
V2Hスタンド 6kW | 300,000円 |
その他のメーカー
補助金額 | |
東光高岳 | 250,000円 |
デンソー | 300,000円 |
アイケイエス | 300,000円 |
GSユアサ | 300,000円 |
このように、補助金を使うことでかなりの初期費用を抑えることができます。
また国に加えて、自治体からも補助金が支給されている場合があります。次の章で詳述しています。
地方自治体からの補助金制度
国からの補助金のほかに、ほぼ全ての都道府県でV2H設置を支援する補助金制度が設けられています。ほとんどの場合、国の補助金と併用可能です。
多くの自治体で今年度の情報が公開されています。まだ公開されていない自治体についても、2023年度の情報を参考に、以下3点を確認しておくことをおすすめします。
- 自分の地域に補助金制度があるか
- 申請期間(昨年度の受付終了日など)
- 補助金対象となる条件は何か
補助金制度の有無については、こちらを参照してください。
国の補助金をすでに受けている場合でも、地方自治体との補助金は併用できます。
V2Hの選び方|確認すべき5つのチェックポイント
V2Hを選ぶ際には、下記のチェックポイントをあらかじめ確認しましょう。
- 系統連系タイプと非系統連系
- 特定負荷と全負荷
- 出力の大きさ
- 操作性が充実しているか
- EV利用者は倍速充電機能がおすすめ
それでは、一つ一つ解説していきます。
ポイント1.系統連系・非系統連系を選ぶ
V2Hで扱う電気は、以下の3つの系統に分かれます。
- EVやPHEV(のバッテリー)
- 電力会社(から送られる電気)
- 太陽光発電(で作られる電気)
ここで紹介するタイプは、これら3つの電気を連係するか・しないかの違いで分けられます。
系統連系タイプ
- 太陽光で発電した電気をEVのバッテリーに充電し、夜間に家庭へ給電することが可能。
- 停電時にも太陽光発電からEVへの充電が可能
非系統連系タイプ
- EVから家庭に給電しているときは、電力会社や太陽光発電システムからの給電を受けられない
- 停電時にも、太陽光発電からEVへの充電ができない
この2つのタイプに価格の差はそれほどありません。
ポイント2.特定負荷・全負荷を選ぶ
特定負荷型タイプ
停電時に、電力を供給する対象が特定の機器だけに限定されます。
全負荷タイプ
停電時でも、家電の種類に関係なく、電気を使うことができます。
特定負荷型 |
|
全負荷型 |
|
基本的に全負荷タイプの方が価格は高くなります。
ポイント3. 出力の大きさ
できるだけ出力の大きいV2Hを選ぶことをおすすめします。
出力の数値が大きいほど、複数の家電製品を同時に使用でき、充電速度も速くなります。
しかし、その分使用量が多くなり、EVに貯まった電気が早く減る点には注意が必要です。
ポイント4.操作性の充実度で選ぶ
操作性の充実度もポイントの1つです。
なかには、スマホの専用アプリから遠隔操作できるタイプもあります。
多くのV2Hでは、本体を操作するとき外に出なければなりません。手間を省きたい方は、操作性の充実度も選ぶポイントとして確認しておきましょう。
しかし、この機能を備えた機種は価格が高くなるため慎重に検討しましょう。
ポイント5. EV利用者は倍速充電機能がおすすめ
EVを頻繁に利用する人は倍速充電機能付きのV2Hがおすすめです。
一般的なバッテリーと比べて、最大2倍の速さで充電することができます。
しかし、機種によっては対応していないものもあるので注意が必要です。
V2Hのおすすめメーカー3機種
ここからは、おすすめのV2Hを3つ紹介します。
それでは、各機種を見ていきます。
ニチコン|VCG-663CN3
ニチコンは、V2Hを世界で初めて開発した会社です。その点から、V2Hを検討している人はまず、ニチコンの製品をチェックしてみるといいでしょう。
ニチコンが現在リリースしている「EVパワー・ステーション」は、高機能かつ低価格である点が特徴です。下記3モデルがラインナップされています。
- VCG-663CN3(スタンダード 3.7m)
- VCG-663CN7(スタンダード 7.5m)
- VCG-666CN7(プレミアムモデル)
そのなかでも特にVCG-663CN3は、定価498,000円という圧倒的な低価格モデルです。
特徴
ニチコンのVCG-663CN3には、以下のような特徴があります。
- V2Hのなかでも特にリーズナブルな価格
- 倍速充電に対応
- 家の状況にあわせて電気を活用できる
V2Hの多くは最大出力が3,000Wであり、充電に約2時間ほどかかってしまいます。
しかし、VCG-663CN3は最大出力6,000Wであるため、一般的なV2Hの2倍の早さで充電可能です。充電に時間がかかるというEVのデメリットを解消しているため、急ぎの際も安心して使えるでしょう。
こんな人におすすめ
VCG-663CN3は以下のような人におすすめといえるでしょう。
- V2Hの導入費用を抑えたい人
- 充電時間を短くしたい人
メーカー | ニチコン |
機種名 | VCG-663CN3 |
重量 | 88kg |
サイズ | W 809 × H 855 × D 337mm(突起物除く) |
保証 | 2年間 |
特定負荷/全負荷 | 特定負荷 |
定価 | 498,000円 |
デンソー|DNEVC-D6075
トヨタグループの大手自動車用電装品メーカーであるデンソーもV2H「DNEVC-D6075」を発売しています。
DNEVC-D6075は、ニチコン「VCG-666CN7」のOEM製品であり、ニチコンの高い性能はそのままに、デンソー独自の強みも備わっている点が特徴です。
※OEM製品とは製造設備を持っていない企業がメーカーに依頼・承諾を取ったうえで、自社の名前で売っているメーカー製の製品 |
特徴
デンソーのDNEVC-D6075には、以下のような特徴があります。
- 全負荷タイプ
- スマートフォンから操作可能
- デンソー製HEMSと連携できる
- メタリックグレーで落ち着き感がある色合い
デンソー製のHEMSと連携可能で、余剰電力を賢く使える点も特徴です。太陽光発電システムを家に備えている場合には、天気予報や過去の使用情報をもとにして、お得に電気を使えるようになります。
「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略で、家庭で使うエネルギーを節約するための管理システムです。
こんな人におすすめ
DNEVC-D6075は以下のような人におすすめといえるでしょう。
- 停電時も普段と同じ生活をしたい人
- 毎日の電気使用量を抑えたい人
- 家中の電気をV2Hから給電したい人
- 家の中から操作したい人
メーカー | デンソー |
機種名 | DNEVC-D6075 |
重量 | 約91kg |
サイズ | W 809 × H 855 × D 337mm(突起物除く) |
保証 | 5年間 |
特定負荷/全負荷 | 全負荷 |
定価 | 1,100,000円 |
東光高岳|CFD1-B-V2H1
電気機器メーカーである東光高岳もV2H「CFD1-B-V2H1」をリリースしています。SAやPA、コンビニなど多くの場所における蓄電池の設置実績があるため、信頼の置けるメーカーといえるでしょう。
特徴
東光高岳のCFD1-B-V2H1には、以下のような特徴があります。
- 非系統連系タイプ
- 他メーカーと比べて小型
CFD1-B-V2H1は、非系統連系タイプである点が大きな特徴です。EVの電気・電力会社から送られてくる電気・太陽光発電システムの電気を同時に使うことはできません。しかし、電給の切り替えを高速で行えるため、停電時間が短く済む点はメリットの1つです。
こんな人におすすめ
CFD1-B-V2H1は以下のような人におすすめといえるでしょう。
- 系統連系タイプにこだわらない人
- 小さめのV2Hを探している人
メーカー | 東光高岳 |
機種名 | CFD1-B-V2H1 |
重量 | 約80kg |
サイズ | W 580 × H 742 × D 310mm |
保証 | 1年間 |
特定負荷/全負荷 | 全負荷 |
定価 | 750,000円 |
V2Hを導入する5つの手順
V2Hの設置を検討している人は、あらかじめ手順について確認しておきましょう。
具体的な手順は、下記のとおりです。
- 申込依頼
- 現地調査
- 工事本契約
- 工事
- 利用開始
ひとつずつ確認していきましょう。
手順1.申込依頼
V2Hの設置は、太陽光発電システムを販売している会社や電気工事会社などに依頼しましょう。すでに太陽光発電システムが設置している場合には、設置工事を担当した業者にそのまま依頼をするとスムーズです。
もし依頼先が決まらない際には、一括見積もりサイトなどを使って業者を探すのも1つの方法です。
手順2.現地調査
業者依頼が完了すると、次に現地調査が行われます。
現地調査では、住宅の電力供給設備や電気配線の状況、設置場所などを確認します。これにより、V2Hの導入に必要な設備や作業内容、かかる費用などを詳細に算出できるようになります。
提出された見積金額に納得がいったら、さらに具体的な話し合いを進めていきましょう。
手順3.工事本契約
現地調査および見積金額に問題がなければ、工事本契約を結びます。契約時には、支払いのタイミングや工事の日程、保証内容などについて確認します。疑問点があれば忘れずに聞くようにしましょう。
工事の契約を結んだ後は、V2Hを使うための電力申請や事業計画変更申請が必要です。しかし、業者が代行してくれるため、あまり複雑な手続きは必要ありません。
手順4.工事
本契約の締結が完了すると、設置工事に入っていきます。V2Hの設置や既存電気配線の改修などが必要ですが、工事そのものは一日で終わることがほとんどです。
手順5.利用開始
工事が完了すると、V2Hが利用できるようになります。
この段階で、使い方やメンテナンス方法などについて業者から説明を受けます。また、システムの動作確認もこの段階で行われます。
まとめ
この記事では、V2Hの価格と補助金内容、おすすめ機種などの解説をしてきました。後悔をしないためにも、費用と補助金内容についてはしっかり下調べをしておきましょう。
V2Hに関する知識をあまり持っていなくても、下調べを入念に行えばある程度の相場情報は手に入れられます。もし少しでも安く抑えたいなら、複数の業者から話を聞いてみてもいいでしょう。
ぜひこの記事を参考にして、お得にV2Hを導入してください。