「エコキュートってなんだろう?」
「ガス給湯器との違いはなに?」
エコキュートは2001年に登場したヒートポンプ式の電気給湯器です。近年、ガス給湯器に代えて、新たに導入する人が増えています。
そこで本記事では、エコキュートのそもそもの仕組みから、メリット・デメリットや寿命・注意点までガス給湯器と比較しながら詳しく解説します。
では、エコキュートの仕組みから見ていきましょう。
エコキュートとは?
エコキュートとは、ヒートポンプ技術によって取り込んだ空気中の熱でお湯を沸かす家庭用電気給湯器のことです。
「1」の電気エネルギーで「2」の大気熱エネルギーを汲み上げ、「3」以上の給湯エネルギーを作ることができます。
つまり、効率的に給湯エネルギーを生成することができます。
「給湯」は、家庭内で最も消費量の大きいエネルギーです。エコキュートを導入することで、給湯の省エネを実現します。
また、ガス給湯器に比べてガス代が浮くので、CO2の排出量削減にも貢献します。
ここからは、そんな高効率エコキュートを導入する3つのメリットを詳しく解説していきます。
エコキュートを利用する3つのメリット
エコキュートを利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、エコキュートのメリットを3つ紹介します。
メリット①光熱費が安くなる
エコキュートを使うと、一般家庭で年間約10〜12万円ほど光熱費を安く抑えられます。
大幅なコスト削減の理由は以下の2点です。
- 電気でお湯を沸かすため、ガス代がかからない
- 割安な夜間電力を活用することで、電気代を削減できる
たとえば、4人暮らしの家庭が、東京電力エナジーパートナー・スマートライフS・1日の使用量460Lで契約した場合の削減額は以下のとおりです。
従来型給湯器からエコキュートに変更した場合
LPガス | 都市ガス | |
導入前の金額 | 159,300円 | 90,000円 |
エコキュートの電気代 | 35,500円 | 35,500円 |
削減額(率) | 123,800円(約78%) | 54,500円(約61%) |
高効率ガス給湯器からエコキュートに変更した場合
LPガス | 都市ガス | |
導入前の電気代 | 133,800円 | 73,300円 |
エコキュートの電気代 | 35,500円 | 35,500円 |
削減額(率) | 98,300円(約73%) | 37,800円(約52%) |
ガス給湯器と比べて、約50〜78%万円の電気代を節約できる場合があります。
ただし、導入にかかる初期費用が高額であることがデメリットにあります。詳しくは後述します。
メリット②停電・断水が起きてもお湯が使える
エコキュートは、空気の熱で沸かしたお湯を貯めておくことができます。なので、タンク内に水やお湯が残っていれば、断水や停電時にも利用できます。
主な機種で370〜460リットルものお湯を貯めることができます。
- 停電時:タンク内の水やお湯を使用。
- 断水時:非常用取水栓から取り出して使用。
ただ、温度調節をすることができないため、使う際には注意が必要です。
このように、エコキュートは停電・断水の備えとしても役に立ちます。
メリット③火災のリスクが低い
電気を使用するエコキュートでは、火災のリスクが格段に低くなります。
ガス給湯器の最も大きな欠点は、ガス漏れの危険性があることです。場合によっては火災や爆発の原因になります。
ガス漏れの危険性がないエコキュートは安全面においてもおすすめです。
このように大きなメリットを持つエコキュートですが、デメリットも多くあります。以下で詳しく解説していきます。
エコキュートを利用する6つのデメリット
エコキュートは以下の6つのデメリットがあります。
いずれも使い方を工夫することで解消できますが、事前に確認しておきましょう。
デメリット①初期費用が高い
エコキュートの初期費用の相場は、約30〜70万円です。ガス給湯器の約10〜30万円と比べても、かなり高額になります。
以下の表で、各タンク容量目安と価格相場を示しています。メーカーや種類によって価格は様々ですが、おおよその相場を参考にしてみてください。
タンクの容量目安 | 初期費用相場 | |
2〜4人向け | 300L | 26.0〜56.7万 |
3〜5人向け | 370L | 34.1〜67.7万 |
4〜7人向け | 460L | 36.2〜71.6万 |
しかし、給湯省エネ事業は、1台につき上限5万円の補助金制度を設けています。エコキュートの設置を検討している方は、補助金の要項を事前に確認しておくと良いでしょう。
LPガス家庭はエコキュートへの切り替えがおすすめ
初期費用は一定かかりますが、LPガスのご家庭はエコキュートへ切り替えた場合、初期費用を回収でき、お得に使える可能性が高いでしょう。
理由はエコキュートの約10〜15年という寿命に対して、削減額が大きいため回収年数が早くなるからです。
以下の表で、先ほどのシミュレーション例から想定される初期費用の回収年数を示しています。
従来型ガス給湯器からエコキュートに変更した場合
LPガス | 都市ガス | |
1年あたりの削減額 | 123,800円 | 54,500円 |
回収年数 | 3〜5.7年 | 6.5〜13年 |
高効率ガス給湯器からエコキュートに変更した場合
LPガス | 都市ガス | |
1年あたりの削減額 | 98,300円 | 37,800円 |
回収年数 | 3.6〜7.2年 | 9.5〜19年 |
【回収年数=460Lの初期費用(最安値と最高値)➗1年あたりの削減額】
一方、すでに光熱費が低い都市ガスから切り替えると、初期費用の回収に19年もかかる場合があります。
このため、全ての家庭にエコキュートが適しているというわけではありません。
導入を検討している方は、十分な費用対効果が得られるかどうか、慎重に検討しましょう。
デメリット②使いすぎるとお湯が切れてしまう
エコキュートではタンクの容量を超えると、お湯が出なくなる「お湯切れ」を起こすことがあります。
ガス給湯器ではすぐにお湯を沸かすことができますが、エコキュートでは、1人分のシャワーのお湯を沸かすのに約30分もかかります。
「お湯切れ」の原因として、以下の2点が考えられます。
- お湯の使用量に対してタンクの容量が小さい
- 普段よりも急激に使用量が増える
「お湯切れ」を防ぐためには、自分の家庭に合ったタンクの容量を選ぶことやエコキュートの設定をこまめに変更することが大切です。
デメリット③冬は光熱費が上がる
エコキュートは冬場になると効率が低下し、光熱費が上昇します。
外気温が低く、熱を作るのにより多くの電力を必要とする上に、お湯を使う回数が増えるためです。
冬場でも電気代を抑え、かつ快適に過ごすために、無駄遣いを避け効率よくお湯や暖房器具を使うことを心がけましょう。
デメリット④運転音が出る
エコキュートは、運転中に低周波騒音を発生させることがあります。この音は、外気からの熱を取り込む過程で発生します。
エアコンの動作音より小さいか同程度の音で、敏感な人は体に伝わって不快感を覚えることがあります。
気になる方は設置する位置を工夫したり、防音材を使用したりして、事前に対策しておきましょう。
「ゴーッ」などのうなるような異音が出る場合は、不具合が生じている可能性があるため、早めの修理が必要になります。
デメリット⑤水圧が低くなる
一部のエコキュートでは、貯湯タンクを保護するために、シャワーの水圧がやや弱めに設定されていることがあります。
エコキュートを使用した際の水圧は、ガス給湯器のおよそ4割にまで減少してしまいます。
しかし、高圧力型のものや、低水圧向けに設計されたシャワーヘッドなど解消する方法もあります。
購入を検討されている方は、各メーカーの水圧力も選ぶ基準として参考にしましょう。
デメリット⑥一定の設置スペースが必要
エコキュートを設置する際は、ガス給湯器よりも広いスペースが必要です。
エコキュートを設置する際には、本体のサイズにあう十分な設置スペースが確保されているか、事前に確認しておきましょう。
エコキュートの寿命
一般的に、エコキュートの寿命は約10〜15年とされています。しかし、これはあくまで目安で、実際には異なります。
エコキュートの寿命が近づくと、以下のような症状が出ることがあります。
- エラーが頻繁に出る
- お湯になるまでに時間がかかる
- 異音がする
- 設定した温度に届かないことが多い
- 水漏れする
- 急に水になる
少しでも長く安全に利用するために、定期的なメンテナンスや設置場所の工夫、環境にあったエコキュートを選ぶことが重要です。
次の章で、購入する際の注意点を解説しています。寿命を伸ばすためのポイントとして確認しておきましょう。
エコキュートを契約する前に注意すべきポイント
ここからは、エコキュートを契約する前に知っておきたい注意すべきポイントを3つ紹介します。
- 有償延長保証には加入したほうがいい
- 入浴剤が禁止のタイプもある
- 塩害地域・寒冷地の方は専用のエコキュートを選ぼう
(1)有償延長保証には加入したほうがいい
エコキュートを契約する際には、有償延長保証に加入することをおすすめします。
有償延長保証とは、メーカー保証期間が終了した後も一定期間の修理費用を無料にする保証のことです。
メリット | デメリット |
修理費用が無料 | 保証料がかかる |
代替品の提供 | 一部の故障や損傷は保証対象外 |
定期点検や清掃サービスが受けられる場合がある | 付属品や周辺機器は保証対象外 |
エコキュートの寿命に達する前に、使い方次第で故障する場合もあります。
有償延長保証に加入するかどうかは、個人の判断ですが、修理費が高額になりやすいことを考えると、加入したほうが安心かもしれません。
(2)入浴剤が制限されていることもある
エコキュートには、入浴剤の使用に制限があることも注意しなければなりません。
入浴剤の成分によっては、部品の一部に腐食や劣化を引き起こしてしまい、故障の原因となることがあるからです。
しかし、ダイキンなどのメーカーは使用可能な入浴剤を紹介しているので、公式サイトや取扱説明書を確認しておきましょう。
(3)塩害地域・寒冷地の方は専用のエコキュートを選ぼう
塩害地域や寒冷地では、耐塩害・耐凍結仕様のエコキュートを選ぶ必要があります。
塩害地域の海水や、氷点下の気温により、タンクや配管などの機器が故障する危険性が高まるためです。
高額な修理費用を避けるためにも、地域の環境に合ったエコキュートを選んで、故障や性能低下を防ぐようにしましょう。
おすすめメーカー3選
最後におすすめのエコキュートメーカーを3つ紹介します。
- パナソニック
- ダイキン
- 三菱電機
いずれのメーカーも、湯張りがスピーディー、シャワーが高圧、スマホで遠隔操作が可能という特徴を持っています。その上で、各メーカーの代表的な特徴を表にまとめました。
特徴 | |
パナソニック |
|
ダイキン |
|
三菱電機 |
|
さらに、いずれも太陽光発電を活用して自家消費を促進し、効率的にお湯を沸かす「おひさまエコキュート」を導入しています。
高機能である反面、初期費用はかなり高額になります。
各メーカーの特徴、価格など慎重に検討して、自分に合ったエコキュートを選びましょう。
この記事のまとめ
エコキュートは、高効率のヒートポンプ技術を採用しており、多彩な機能を備えて光熱費の削減や快適性を確保できます。
もちろん、初期投資が高い、お湯が切れるといったデメリットも存在しますが、事前に把握しておくことで対策できるものです。
生活スタイルやニーズに合わせて、最適な給湯器を選びましょう。
エコキュートとは?よくある質問
Q1.メンテナンスはどのくらいの頻度でするべき?
エコキュートは、定期的な点検と清掃・調整が基本となります。
- 点検は半年に1回
- 清掃は1ヶ月に1度以上
これらのメンテナンスは、エコキュートの性能を維持し、長期的なトラブルを防ぐために重要です。
また、現在の状態を確認するために診断を行う場合もあります。
費用の目安は、1回につき6,000円〜15,000円ほどです。
メンテナンスには一定の費用がかかりますが、これはエコキュートの長期的な性能維持とトラブル防止のための投資と考えて受けておきましょう。
Q2.凍結したらどうすればいいの?
冬場の冷え込む時期には、エコキュートの配管が凍結することがあります。凍結してしまった場合は、配管にぬるま湯をかけるか、急ぎでない場合は、自然解凍を待ちましょう。
凍結を事前に防止する方法もあります。
- 蛇口から少量の水を出し続ける
- 凍結防止機能を使う
- 保温剤が壊れていないか確認する
また、各メーカーが凍結防止動画を提供しています。以下のリンクで確認しましょう。