「蓄電池で電気代はどれくらい下げられるの…?」
この記事では、蓄電池を設置することで電気代がどれだけ安くなるか、シミュレーションを含めて気になる点を徹底解説します。
注意点として、蓄電池は下記に当てはまると、逆に電気代が高くなってしまう可能性があるので必ず確認してください。
- 太陽光発電と併用していない
- 太陽光発電の発電量が低下している
もし、節約効果を得たい方は太陽光発電と併用して電気代を節約しましょう。
ぜひ最後まで確認してください。
蓄電池を設置すると電気代は安くなるのか
蓄電池を設置すると、太陽光パネルを設置している場合は基本的に電気代が安くなります。
理由はシンプルで、電気代が安い時間帯の電力を『蓄電池で貯めて、電気代が高い時間帯にその電力を使える』からです。
しかし、蓄電池の使い方や設置状況によっては、逆に電気代が高くなるケースも存在します。その場合、導入費用の回収に多くの時間がかかり、費用対効果が悪くなるでしょう。
こういった状況にならないようにも、まずは実際にどれくらい蓄電池の設置で電気代を削減できるのか、まずはシミュレーションしてみましょう。
蓄電池で電気代はどれくらい削減できる?シミュレーション解説
蓄電池を導入するとどれくらい電気代を削減できるのか、シミュレーションを行ってみました。
太陽光発電のみの場合
以下の条件のようなご家庭の場合、太陽光発電のみだと年間の電気節約額は「69,731円」となります。
- 場所:東京都八王子市
- 世帯人数:4人
- 契約プラン:東京電力 従量電灯B
- 設置量:2kW(南向き)
- 直近の電気料金:月12,000円
- 年間発電量:2,490kWh
- 年間節約額:69,731円
蓄電池も設置する場合
しかし、条件を変えずに蓄電池も設置するパターンをシミュレーションしてみると…
- 蓄電池容量:5kW
- 年間節約額:85,687円
なんと結論としては、約15,000〜20,000円の電気代を年間で削減できる可能性が高いでしょう。
太陽光・蓄電池のセットで電気代が安くなる2つの理由
次に、なぜ太陽光パネルと蓄電池のセットがより経済的に効果があるのか、2つの理由を解説します。
理由1.売電収入を増やせる
太陽光パネルを日中稼働させつつ、料金の安い深夜電力を蓄電池に貯めて昼間に使えば、売電しつつ安い電気を家庭で使用することができます。
つまり、自家消費は安い電力でおこない、さらに売電収入も得ることに期待できるので、一石二鳥といえるでしょう。
理由2.電気代が天候に左右されない
太陽光発電のデメリットは『天候に発電量が左右される』点です。しかし蓄電池を導入すれば、このデメリットは解消される可能性が高くなります。
なぜなら、太陽光で生まれた電力や深夜電力を蓄電池に事前に貯めておけば、天候が悪いときにも安い電力を利用できるからです。
パネルが設置済みの住宅でも蓄電池だけ後付けすることも可能ですので、ぜひ検討してみてください。参考
蓄電池を置くことで電気代が高くなる2つのケース
ここまでは「電気代が安くなります!」という解説をしてきましたが、蓄電池をおくことで電気代が高くなるケースもあります。
太陽光と併用していない場合は、電気使用料が増えてしまいますし、併用していたとしても太陽光の発電量が低下していると削減効果は薄れてしまいます。
またすでに月々の電気代が安い場合、大きな削減効果が得られずに蓄電池の導入費用を回収することも難しいでしょう。
ここからは、それぞれ詳しく解説していきます。
ケース1:太陽光発電と併用していない
蓄電池だけを設置している場合は、蓄電池に貯めた分だけ電気使用料が増えるので電気代が高くなる可能性があります。
太陽光発電との併用なら、昼間に太陽の光を利用して電気を作り、それを蓄電池に充電できます。なので蓄電池の充電には電気代がかかりません。
また、電気の契約プランを夜間電気料金が安いプランに変えると、昼間は太陽光発電で自家消費、夜は安い電気を蓄電池に貯めて使う、といった削減にも取り組めます。
太陽光発電ありなしのシミュレーション結果
たとえば、東京で4人暮らしの場合、太陽光発電と蓄電池を併用すると蓄電池のみと比べて電気代を年間で49,320円ほど多く削減できます。
- 東京都:スマートSプラン
- 充電:夜間
- 放電:ピークタイムの昼間
- 太陽光発電の削減効果:6kWh(2kWシステム)
- 蓄電池の削減効果:5kWh
蓄電池のみ | 太陽光発電×蓄電池の併用 | |
充電にかかる費用 | 140.3円 (28.06円/kWh) |
0円 (太陽光発電に依存) |
太陽光発電の 電気代削減量 |
0円 | 35.96円 (35.96円/kWh) |
蓄電池の 電気代削減量 |
179.8円 (35.96円/kWh) |
140.3円 (28.06円/kWh) |
1日の削減量 | 約40円 | 約177円 |
1か月の削減量 | 約1,200円 | 約5,310円 |
年間の削減量 | 約14,400円 | 約63,720円 |
差額 | – |
約49,320円 |
※電気代は端数切り上げ
このように、太陽光とセットにするかどうかで年間3〜4万円も値段が変わります。
蓄電池だけでは電気代の削減効果が低く、場合によってはかえって電気代が高くなる可能性があるでしょう。
ケース2:太陽光発電の発電量が低下している
太陽光発電の発電量が低下していると、電気代が高くなる可能性があります。
なぜなら、自宅で使用できる電力量が減少して、電力会社からの供給に頼る必要が増えてしまうためです。
また発電量が多い場合でも、その電力を効率的に利用しきれない場合、電気代の節約につながらないこともあります。
たとえば、太陽光発電システムは下記の理由で一般的には年間で約0.5%から1%程度の低下率が見込まれます。
つまり10年後には発電量が約5%〜10%減少することになります。
原因 | 補足説明 |
---|---|
日照不足 | 太陽光不足 |
高温 | 高温による発電効率の低下 |
雪や氷 | 雪や氷による太陽光不足 |
太陽光パネルの汚れ | 汚れによる太陽光不足 |
パワコンの劣化 | 劣化による発電量の低下 |
配線の不良 | 配線の接触不良による発電量の低下 |
この中でも、パワーコンディショナー(パワコン)の劣化・故障による変換効率の低下は意外に見逃しやすい部分です。
パワーコンディショナーの劣化は発電効率に影響する
パワコンとは、太陽光発電システムや蓄電池で発電した電気を家庭用電力に変換する機器です。
このパワコンは、使用の有無にかかわらず内部で劣化が進むことで発電効率が徐々に低下し、年間で約0.9%ほど低下します。
さらに、蓄電池は100%効率で動作するわけではなく、充放電の際に約5〜10%のエネルギー損失が発生するため、発電量はさらに減少することがあります。
- 太陽光発電システム:10kW
- 蓄電池:5kWh
この条件で10年ほど使い続けた結果、下記のような結果となります。
太陽光発電の発電量 | 約9kW |
蓄電池のエネルギー損失 | 約2.5kWh |
合計のロス | 約11.5kW |
月間の金額換算 | 345円 |
年間の金額換算 | 4,140円 |
こうしたロスが増えてしまうと、結果として蓄電池で補える電力量が低下してしまい、十分な効果が得られないことで電気代が高くなる可能性があるでしょう。
もし蓄電池の設置予定の方で、すでに太陽光発電がついている場合は、パワコンが劣化していないか変更する必要があるかも合わせて依頼してみましょう。
蓄電池で電気代を抑えるには?3つの対策を解説します
ここからは蓄電池を実際にどう利用すれば、電気代を抑えられるのか3つの対策を解説します。
対策1.太陽光発電と併用する
上記の章では何度もお伝えさせていただきましたが、改めて蓄電池で電気代を抑えるためには太陽光発電との併用が必須と言えるでしょう。
太陽光発電があることで、蓄電池の充電に必要な電気代を削減できますし、余剰電力は売ることでさらに削減効果を高められるためです。
もし、5kWhの蓄電池の充電を『自宅の電気で行う場合』と『太陽光で補う場合』では、月々で5,000円ほどの金額差が出る可能性があります。
太陽光発電なし | 5,394円 |
太陽光発電あり | 0円 |
このように、太陽光発電は余計な電気代を削減できるので、必ずセットで設置するようにしましょう。
また、充電に使ってもさらに余った場合は、FIT制度によって買取してもらうこともでき、今なら16円/kWhの売却利益も得られるため、よりお得です。
さらに、夜間に発電できない電力を蓄電池で補えるところは太陽光発電のデメリットを打ち消す効果といえるでしょう。
対策2.ライフスタイルに合わせて使用する
蓄電池はライフスタイルに合わせて使用すると電気代の削減効果を高められます。
これは、各家庭で電気プランが異なり使用するタイミングでも電気代削減効果が変わるためです。
モード | 効果 |
---|---|
太陽光と連動して充放電 | 充電にかかる電気代を削減 |
夜間に充電して昼間に放電 | ピークタイムの電気代を削減 |
昼間に充電して夜間に放電 | ピークタイムの電気代を削減 |
停電に備えて充電を維持 | 停電時の電力を確保 |
基本的に、モードは手動で切り替えたり、自動で切り替えたりできるため、自分の生活パターンや目的に合わせて選びましょう。
対策3.深夜の電気代が安いプランに変更する
もし、契約している電力会社に深夜の電気代が安いプランがある場合は、それに変更することも一つの対策です。
電力会社によっては、電気の使用量が少ない夜間を対象に、電気代を抑えられたプランが提供されています。
たとえば、東京電力のスマートライフSであれば、下記のように深夜1時から午前6時までは電気代が安くなっています。
時間帯 | 料金 (円/kWh) |
---|---|
午前6時〜翌午前1時 | 35.96円 |
午前1時〜午前6時 | 28.06円 |
他にも九州電力であれば、下記のように季節で変動することもあるほどです。
時間帯 | 季節 | 料金 (円/kWh) |
---|---|---|
平日昼間 | 夏冬 | 27.57 |
– | 春秋 | 24.68 |
休日昼間 | 夏冬 | 21.95 |
– | 春秋 | 18.55 |
夜間 | – | 14.48 |
この深夜の時間帯に蓄電池を充電しておけば、昼間や夕方の高い時間帯に使用することで買電費用を抑えられるでしょう。参考
一部地域で深夜電気代が安いプランが新規申し込みを停止中
ただし、一部の電力会社では、こういったプランの新規加入申し込みを停止しているため注意が必要です。
たとえば、東北電力は2021年の4月1日以降に「深夜機器割引」を取りやめているので、自分が住んでいる地域は大丈夫なのか事前に知っておく方がいいでしょう。
結局どうなの?蓄電池がおすすめな人とおすすめできない人
蓄電池がおすすめな人とおすすめできない人は、下記のとおりです。
おすすめ | おすすめできない |
---|---|
電気代を節約したい人 | 太陽光をつけていない人 |
太陽光を設置している人 | すでに電気代が安い人 |
停電対策もしたい人 | – |
蓄電池がおすすめできる人
蓄電池がおすすめできる人は、以下のような人です。
- 停電に備えたい人
- 太陽光発電を設置している人
- 電気代を節約したい人
停電に備えたい人は、蓄電池があれば自家発電した電力を使って生活できます。また、災害時や停電時にも備えることができます。
そして、電気代が高騰している2024年現在、電気代を節約したい人にとって電気を自家消費できるのはメリットが大きいでしょう。
蓄電池がおすすめできない人
一方で、蓄電池がおすすめできない人は、以下のような人です。
- 太陽光発電と併用しない人
- すでに月々の電気代が安い人
太陽光発電と併用していない人は、蓄電池を置くことで電気使用料(充電にかかるお金)が増えてしまいます。
また、蓄電池は一般的に高価なため、すでに月々の電気代が安い人は削減できた電気代を使って導入費用を回収することも困難でしょう。
電気代が安くなる蓄電池メーカー3選
ここからは電気代が安くなる蓄電池のおすすめメーカーを3つ紹介します。
ニチコン:トライブリッド蓄電システム7.4kWh
引用:nichicon
ニチコンの蓄電池は豊富な機能に加え、4.9kWh〜10kWh以上の大容量まで幅広い製品を展開しているメーカーです。
中でもおすすめの製品は、全負荷&200V対応モデルの「ESS-T3S1」です。性能や機能性が高く、価格も他の商品に比べるとお手頃。
また、保証期間も15年と長く、見守りサービスや気象警報との連携、AI自動制御まで豊富なサポートが充実しているのも見逃せません。
メーカー | ニチコン |
機種名 | ESS-T3S1 |
重量 | 61 kg |
蓄電容量 | 7.4kWh |
保証 | 15年間 |
設置場所 | 屋内・屋外 |
本体価格 | 130万円〜(※このページからの申し込みのみ) |
パナソニック:創蓄連携システムS+
引用:パナソニック
パナソニックの蓄電池は、パワフルな性能ながらコンパクトな蓄電池となっているため導入しやすい製品でしょう。
安全性や耐久性にも優れているので、災害時や停電時の対策にもバッチリです。
また住宅用では、太陽光発電と連携した「エネファーム」や「スマートHEMS」などのシステムを提供しています。
蓄電池の容量や配置などは柔軟に設計でき、太陽光発電と組み合わせることで、自家消費率を高めて余剰電力の売電を減らせるのが大きなメリットです。
メーカー | パナソニック |
機種名 | 創蓄連携システムS+ |
重量 | 46~68kg |
蓄電容量 | 3.5/5.6kWh |
保証 | 10年間:無料15年間:有償 |
設置場所 | 屋外・屋内 |
本体価格 | 154万円〜(工事費込み) |
シャープJH-WB1921
引用:シャープ
シャープは有名な電機メーカーで、住宅用としてはクラウド蓄電池システムとして、EV連携対応の蓄電池を大容量・ミドル・コンパクトの3種類で展開しています。
太陽光発電と組み合わせることで、余剰電力を売電または自家消費することも可能。屋外設置において簡易基礎ですぐ設置できるため、素早く蓄電池を使いたい人におすすめです。
ただし、初期費用がほかのメーカーより高額になるケースも多いので注意してください。
メーカー | シャープ |
機種名 | JH-WB1921 |
重量 | 約74 kg |
蓄電容量 | 6.5kWh(6.3kWh) |
保証 | 10年間:無料15年間:有償 |
設置場所 | 屋外・屋内 |
本体価格 | 180万円〜(工事費込み) |
蓄電池の電気代に関するよくある質問
Q1.蓄電池で電気代が安くならないという声がある理由は?
蓄電池の導入により電気代が安くならない、あるいは上がったと感じる理由は以下の2つでしょう。
理由1.電気プランを変更していない
まず1つ目は、蓄電池の利用方法によるものです。蓄電池は、電力会社からの電力供給が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電することで電気代を節約できます。
しかし、この電気プランを変更せずに充放電を行っていない場合は、逆に電気代が上がる可能性もあります。
理由2.電気使用量にあった蓄電池ではない
2つ目は、蓄電池の容量と家庭の電力消費量のバランスが悪い場合です。
蓄電池の容量が小さすぎると、必要な電力を供給できずに電力会社からの電力を多く使用することになり、結果として電気代が上がる可能性があります。
Q2.蓄電池は電気代に効果あるの?節約できる?
Q1の対策ができていれば、電気代の節約は十分可能です。
また、太陽光発電と組み合わせることで、昼間に発電した電力を蓄電池に保存し、夜間に使用することで、電力会社からの電力供給をほとんど必要とせず、大幅な電気代の節約が可能となります。
また、蓄電池は電気代の節約だけでなく、災害時の非常用電源としての役割や、再生可能エネルギーの利用拡大に寄与するなど、様々なメリットがあります。
まとめ:蓄電池は条件を満たせば電気代が安くなる可能性が高い
蓄電池の導入は、太陽光発電と併用することで、さらなる削減効果を期待できます。
賢く蓄電池を活用するためには、夜間に充電することで昼間の使用に備えるなどの工夫が必要です。
ただ、電気代の削減だけでなく、災害時に備えて備蓄としての役割も果たせるので、ぜひ検討してみましょう。
蓄電池の設置方法を学び、自分に合った使い方を見つけることで、より効果的な電気代の節約を実現してください。